資材調達・購買の仕事に興味があるなら、入社する前にどんな大変なことがあるのか知りたいですよね。
本記事では資材購買歴25年の現役購買マンである筆者が「購買の仕事は本当につらいのか?」検証してみました。
・購買の仕事には、どんな辛さがあるの?
・購買はストレスが溜まるって本当?
・購買でしんどいのは、どんなとき?
こんな疑問にお答えします。
本記事の信頼性として、購買部長としてのわたしの市場価値です。
転職者に必須のMIIDAS(ミイダス)の市場価値診断で測定した結果が以下のとおり。
262社からのオファーと最高年収は1100万円でした。
平均の提案年収は678万円ほど。
25年の資材調達・購買のキャリアの中で、仕事でつらいことはたったの3つでした。
震災やリーマンショックなど、大変な状況も経験してきたし、最近ではウイルスや東京オリンピックの延期といった未知の状況も発生していますよね。
辛いことを経験しながらでも仕事を続けられるのは、辛いことが解決できるからですよ。
なお、最近は値上げや供給不測の問題で離職する購買マンも多いですが、そういった悩みは以下の記事で解決しています。
資材調達25年の結論。購買の仕事がつらい理由は3つだけ│解決できる
資材購買調達の仕事がつらい状況は次の3つだけです。
①個人で判断しなければならないとき
②取引先と社内の間で板挟みになるとき
③取引先が事故や災害にあったとき
これだけみると、購買の仕事は「ストレスを受けやすい」と思うかもしれませんね。
でも逆に言えば、たったの3つをクリアすればノンストレスで仕事ができます。
購買の仕事は、購買部門単独で問題を解決することができます。
では、詳しく解説していきます。
購買はつらいよ①│個人で判断しなければならないとき
購買部では自分の担当分野は、自分一人で業務を進めていきます。
大企業では組織化されていることもありますが、基本的には個人のスキルに任されます。
どんな仕事であっても、悩みや問題がない仕事はないですよね。
このときに、自分の力では処理できない案件を一人で抱え込むと極大ストレスにさらされる事になります。
新人がいきなり辛くなってしまうときは、問題を一人で解決しようとして、抱え込んでいることがほとんどです。
こんな経験をしてしまうと、友人との飲み会などで、こんな愚痴が出てしまうかもしれません。
解決策:上司に相談すればOK
たとえば、最近では材料が入らなくて悩んでいる購買部員も多いはず。
そんなときに辛くならない方法は「調達部長が教える材料供給不足の理由と対処法│胃が痛い毎日から脱出」で解説しました。
上記のプロセスで解決していけばOKです。
担当者で解決できない問題は上司に報告するのが会社のルールです。
会社は組織で仕事をしており、組織には上申フローという仕組みがあります。
いやいや、会社のルールはそんなときのためにあります。
購買はつらいよ②│取引先と社内の間で板挟みになるとき
購買部門は中立な立場で判断していくことが求められます。
取引先の味方になっても、自社内の味方になってもいけません。
つまり、誰も味方がいない状況に陥りがちです。
同時に購買部門は取引先への一次窓口であり、会社の顔でもあります。
なので、一方では気を張っている必要もあるんですよね。
購買の仕事は、つねに中立を保たなければなりません。
たとえば、新規製品の素材の要求品質が以下の場合。
板厚2.0mmで公差±0.05
価格は1キロ100円以内
納期は1ヶ月
取引先の回答は以下で、購買担当としては妥当だと考えています。
板厚2.0mmで公差±0.08
価格は120円
納期は2ヶ月
▼社内の要求と取引先の回答の差
社内の要求 | 取引先の回答 | |
板厚規格 | 2.0±0.05 | 2.0±0.08 |
価格 | 100円/kg | 120円/kg |
納期 | 1.0ヶ月 | 2.0ヶ月 |
この場合、購買部員には二つの選択があります。
①社内の要求を見直す
②取引先の回答を再交渉する
社内と取引先の間に立って、折り合いをつけるのも購買部員の仕事です。
そんなときはシンプルに動けばOKです。
- 中立の立場で
- 一般的な価値に従って
- 説得を行う
板挟みで中立を保つコツ:社長マインドになる
板挟みにならないコツは、自分が社長になったつもりで行動することです。
なぜなら、社長は会社の利益をいちばんに考えて意思決定をするからです。
社長思考の考え方は以下の記事にまとめています。
≫サラリーマンが35歳で一度は仕事を辞めたくなる理由│勉強不足です
購買職としての優先順位の付け方は下記の記事を参考にしてみてください。
≫資材調達でQCDSの優先順位に迷った時の対処法【購買部長の結論】
購買はつらいよ③│取引先が事故や災害にあったとき
事故や災害は予測できませんが、起こったときには購買部員が問題解決にあたります。
モノが入らず社内の生産が止まってしまうということは、会社に多大な損失を与えるため、責任重大です。
製造業はモノを作って事業が成り立っています。
材料が調達できなくてはモノづくりができません。
その材料の調達を個人で引き受けているのが、購買部員です。
日本は地震が多い国なので、数年に一回は取引先の工場が停止したりしますし、工場火災などの事故もわりと頻繁に起こります。
そんなとき、購買部門へかかるプレッシャーはかなり大きくなります。
・その先のお客様に迷惑がかかる
・社内も簡単に譲れない
ですが、事故や災害時には、自社よりも相手のほうが大変です。
自社の都合だけを主張して、納期確保の交渉をするときには、ベテランのわたしでもツラさがあります。
解決策:BCPの手順通り行動
事故や災害時の対応はコツが分からない新人が一人で抱え込んでしまうと、とてつもないストレスに変わっていきます。
この場合も個人で抱え込む必要はありません。問題が起きてしまったら、上司に相談すればOKですよ。
新人が辛くなってしまうのは、行動基準がないことだったりします。
お互いの意見の差で生まれた納期問題とは違い、災害や事故に対しては明確な行動基準があるから心配なしです。
最近では、会社単位でBCPを作成することも多くなってきました。
自社にBCPがあれば、そのとおりに行動すればOKです。
BCPについては「製造業のサプライチェーンBCP対応とは?現役の調達購買部長が解説」でまとめていますから、参考にしてみてください。
購買の仕事は自分しだいでノンストレスにできる
Wrike株式会社の調べによると、日本のサラリーマンの仕事のストレスの上位は以下の3つといわれています。(参照:PRTIMES 695人を対象にアンケートした結果)
1位 仕事量が多すぎる:13.5%
2位 コミュニケーションが足りていない:11.9%
3位 上司が威圧的で細かいことまで指示を出す:10.1%
購買の仕事は、工夫次第で上記の問題は解決できます。
購買職は特殊な職種
秘密は資材購買の特殊な立場にあります。
・自分の業務をコントロールしやすい立場
・買う側はどんな場合でも有利な立場
相手がいる営業だと実現が難しいことでも、購買なら簡単にノンストレスにすることができます。
業務をコントロールしやすい立場を活用
購買の特徴をフルに生かすことで、購買職は業務を超効率化できます。
・期限を自分の都合で設定できる
・自分で仕組みを作ることができる
購買部門は期限を自分の都合で設定できる
購買の仕事は自分から期限を設定する立場になれます。
例えば
「〇日までに資料を提示してください」
「〇日までに見積もりをご提示ください」
「その日は都合が悪いので、○日に来社してください」
「〇時までに納期の回答を連絡してください」
こんな言葉で締めるのが購買という立場。
自分で期限を設定できるというのは、本当にストレスがたまりません。
それは、自分で自分の仕事をコントロール出来ないからです。
「その日は早く帰りたいのに、仕事があるから帰れない」
「明日出張があるので、この仕事が終わるまで帰れない」
購買部員は自分で仕組みを作ることができる
購買の仕事は受け身にならないことが、ストレスから身を守る一番の方法です。
購買担当は良くも悪くも個人プレーです。
個人に責任が集まりプレシャーになる一方、自分で楽な仕組みを作り上げることもできます。
最近は「受け身で適当に働いて余暇を楽しむ」というスタイルが主流かもしれません。
でも、購買では「主体性をもって積極的に改善していくスタイル」がベストです。
ストレスゼロで仕事をする方法と具体例
じゃあ具体的にどういった行動をとればストレスが無くなるのかを、よくある会話の例で説明します。
「あ、きみ、これちょっとやっておいて」
「はいわかりました・・・」
「あ、それが終わったらこれもお願いね」
「うう、、ぜんぜん終わらない・・」
「この状況は、いずれ依頼が来るから事前に下調べしておこう」
「今は問題ないけど、納期問題が起きないように事前に問い合わせしよう」
「今回は何も無かったけど、次に同じことが起こったら危ないな」
「先に改善しておこう!」
こうしておけば、以下のようになるはず。
「あ、きみ!これやっといて!」
「あ、その資料ならもう準備してますよ」
自分から前向きな行動をとっていくと、業務がどんどん自分のものになります。
そうすると、業務に追われることなくストレスゼロな職場環境が出来上がります。
受け身な人が主体的になるコツは時間を作ること
主体的に仕事ができるように、時間を作りましょう。
普段のしごと=価値が低い
仕組みつくり=価値が高い
上記が正解です。
・普段の仕事が忙しすぎて、そんな改善してる暇ない!
・納期の追いかけは価値がある仕事だし、達成感があるよ!
こんな悩みがあるときは仕事の価値を意識しながら仕事をすれば解決できます。
仕事の種類は4つに分かれます。具体的には下図のとおり。
①重要で緊急
②重要ではないが緊急
③重要だけど緊急ではない
④重要でも緊急でもない
「重要だけど緊急ではない仕事」は将来のあなたを「楽」させる投資のような仕事です。
どんどん積みあがって、あなたのスキルと環境をよいものにしてくれます。
購買の仕事はサラリーマンに向いていない人に最適
資材調達は「ぼくはサラリーマンに向いていないかも?」という方に最適な仕事です。
なぜなら、とてもいい加減で怠け者な人間なわたしが、心の底から購買の仕事は他の仕事よりも楽だと感じているからです。
そんなわたしが「購買・資材調達の仕事に向いている」とすれば、たぶん購買・資材調達の仕事は「誰にでも向いている」と言えます。
事実、営業や工場の方からは「つらい仕事でしょう」「ストレスが大変ですね」と声をかけていただきますが、わたしはとても困ってしまいます。
購買の仕事は、みんなが思うほど辛いものではなく実は、楽な仕事なんですよね。
ほかの人の意見も聞いてみよう!
「でもそれってあなたの感想でしょ?」と思われるかもです。口コミを確認できるサイトで他の人の意見もどうぞ。
・OpenWork:社員の口コミが書き込まれているサイト。年収や企業風土など現場で働く方の意見を直接知ることができるから有益です。
・転職会議
購買職はつらくないのが普通です
購買の仕事はスキルの少ない若い時だけはツライかもしれませんが、スキルが積みあがるほどにラクに働けます。
資材購買調達で一番ダメなのは、受け身の仕事を続けること。
購買の仕事では3つの場面の対処法を身に付ければつらい仕事ではありません。
①個人で判断しなければならないとき
②取引先と社内の間で板挟みになるとき
③取引先が事故や災害にあったとき
なぜなら、ノンストレスで残業がゼロになれば「ブラックな環境で過労死」とは無関係な世界で生きられるし、空いた時間で学習してキャリアアップも目指せます。
ちなみに、ストレスフリーなボクの日常は以下のとおり。定時で帰るほうが多いですが、トラブルが起こると少し残業になる感じです。
7:30 | 出社 |
---|---|
8:00 | 始業・朝礼 |
メール確認~返信(約50件) | |
発注業務・納期進捗の確認 | |
10:00 | 10分の休憩 |
納期進捗の確認 | |
来客対応 | |
12:00 | 昼食 (社員食堂) |
12:45 | 先行情報資料の作成 |
来客対応 | |
15:00 | 10分の休憩 |
品質・コストダウン資料の作成 | |
16:30 | メールの確認 |
16:45 | 報告・終業 |
休憩 | |
17:00 | 残業開始 |
納期・品質トラブルの解決 | |
残った資料の作成など | |
18:00 | 退社 |
もし、あなたがつらいなら「業界か会社のどちらかが悪いのでは?」と疑ってみるべきでは?
購買の仕事がつらいのは、あなたのせいじゃない
例えば、下表のとおり、同じ購買職でも業界によって働き方や文化は違います。
業務内容 | 職場環境 | 人間関係 | |
完成車メーカー 車載電装サプライヤー |
コストエンジニア | 完全フレックス
残業なし ビジネスカジュアルな服装 |
役職は役割 自由な雰囲気
|
電器、電子部品メーカー | コストエンジニア |
コアタイムありのフレックス 残業は30時間程度あり ビジネスカジュアルな服装 |
役職は役割 自由な雰囲気
|
化学、材料メーカー | 納期管理と伝票処理が中心 |
定時間勤務 残業は60時間以上も 休日出勤もざら 作業服勤務 |
役職は権限
上位下達な雰囲気
|
このあたりは「転職前に要チェック!資材調達の業務内容と職場環境は業界別で大違い」の記事にまとめています。
また、同じ業界であっても、会社のフェーズによって購買職の適性も違います。
1、成長のフェーズ│積極的な購買活動(新規開発など)
2、守りのフェーズ│消極的な購買活動(コスト削減など)
3、安定のフェーズ│安定的な購買活動(平準化やBCPなど)
4、再生のフェーズ│改革的な購買活動(事業撤退など)
結論は自分が楽しいと思えるフェーズにある会社を選ぶべきでして、自分に合った会社なら毎日ワクワクした気分で出社できます。
このあたりは「今の仕事が向いてるかって?悩むのはそこじゃない【適職の見つけ方】」の記事で詳しく解説しています。仕事を見直す気づきになるかと。
ストレスゼロの働き方は幸福度が上がります
元営業から転職したボクの意見ですが、ぶっちゃけ資材調達はキャリアプランとしては最高の仕事だと思います。
ブラック企業でないかぎり、購買職として受身にさえならなければ、あなたの理想とする未来が待っているからです。
逆にブラック業界で働いてしまうと、あなたがいくら頑張っても逆につらくなっていきます。
なぜなら「資材調達の仕事が激務だと感じたらブラック業界です│即転職でもOK」の記事で書いたとおり。
ブラック業界とは、そういったがんばる人の労働力を搾取するビジネスモデルだからです。
逆にホワイトな職場で購買職としてキャリアアップすると年収が増えるので、人生の選択肢と幸福度も少しずつ上がっていきます。
例えばボクの場合は以下のとおりステップアップできました。
・キャリアアップ転職で年収アップを目指す
・出世を目指す
・副業で稼ぐ
・独立起業する
・友人、家族、趣味に時間を使う
≫購買職の平均年収とは?収入を3倍増する3手順【1千万円の目指し方】
仕事がつらい未来は、以下の方法で回避できます。
・受け身の仕事をしない
・自分のスキルにあった業界で働く
・自分の性格に合った会社ではたらく
自分の性格やスキルを存分に発揮できて、自分が改善した分だけ毎日の仕事のストレスから解放されていく働き方を想像してみてください。
さらに購買職は独立できるだけのスキルを身に付けたり、空いた時間で副業することで、人生の自由度も増していく仕事です。
どの会社でも高く評価される専門スキルや個人で稼げるスキルを身に付けるだけで、アナタの理想の人生も夢ではないはずです。
もしあなたの仕事がつらいなら、本記事をきっかけに、今の仕事を見直してみるといいかもしれませんね。やり方は以下の記事を参考にどうぞ。
新卒の就職手順を知りたい方
≫【保存版】調達購買職への就職手順│スケジュールごとのポイントまとめ
転職手順を知りたい方
≫【未経験者向け】購買転職手順の完全講義│現役部長が求人の見方を解説
キャリアに不安がある方
≫【解決策あり】30代でも購買転職の書類選考に受からない3つの理由
未来を選ぶのはあなた自身。
では本記事は以上です。