資材調達の担当として、判断に迷う場面がトラブル時の優先順位のつけ方です。
納期(D)なのか、品質(Q)なのか、価格(C)なのか、お付き合いの大きさ(S)なのか?
まさに「あちらを立てればこちらが立たず」な状態です。
・トラブルが起こったときには何を優先すべきだろう?
・工場からはラインが止まるといわれるし、納期が大事なのかな?
・あの部署の上司は怖いし、声の大きいところに従っても仕方が無いよ
・自分で判断できなくてつらい、どうすればいいんだろう?
今回の記事では、こんな悩みを解決します。
・資材調達で初めてトラブルを経験してどうすればいいか分からない方
・資材調達担当の経験が少なくて、トラブル時の判断基準が分からない方
・トラブルを抱え込んで、もう耐えられそうにない方
わたしも、今では資材購買25年。
部長として指導する立場ですが、最初は新人でした。
担当が決まって間もない頃は、トラブルを抱えても、どうすればいいかわかりません。
判断の基準もなく、一人で抱え込んで悩んでいました。
トラブルを抱えてしまうと、毎朝会社に行くのがイヤになります。
今回の記事を読めば、そんな悩みは無用だということが分かりますよ。
明日からは、すがすがしい気持ちで会社にいけるようになります。
Contents
資材調達部長の結論!│QCDSの優先順位に迷ったときの判断基準とは?
資材購買歴25年間の結論です。
「品質(Q)」「コスト(C)」「納期(D)」「サービス(S)」
QCDSの優先順位の判断で迷ったときに、資材購買部として優先すべき判断基準は
「会社のルールに従う」
これが最良です。
教科書的な答えは「品質が最優先、次が納期とサービス、最後が価格」とされています。
ですが、実務では「会社のルールに従う」が正しい答えです。
その理由を、資材調達の役割を説明しつつ、順番に解説します。
役割に関してのよくある間違い【コスト最優先ではない】
「購買・資材調達部の仕事=安く買う」という認識の方がいますが間違いです。
「安かろう悪かろう」という言葉がありますよね。
コストだけを追い求める購買は、悪いものを会社に供給してしまうのでダメ。
QCDSの最適なバランスをとれる購買が優秀なバイヤーと呼ばれます。
さらに知りたい方は、詳細記事を読んでみてください。
役割に関してのよくある質問【優先順位は品質が最優先じゃないの?】
「QCDSの4つが対立した時は、品質優先と書いてある本が多いけど?」
こんな質問をよく受けます。
教科書的な答えは「品質が最優先、次が納期とサービス、最後が価格」とされています。
ですが、実務では「会社のルールに従う」が正しい答えです。
例えば、実務で一番遭遇するのは「納期が先か、品質が先か」という場面です。
会社には様々な思惑があります。
「モノが揃わないと工場がとまる!モノをそろえるのが仕事だろ!」
こんな優先順位で攻めてくる人もいます。
ですが、そこを食い止めるのも購買の役割(QCDSバランスの最適化)です。
もしあなたが、言葉に乗って「スペックが多少外れてもいいから近いもの」を購入してしまったらどうでしょう。
そのときはいいかもしれませんが、未来の損失につながりかねません。
現場でロスが多発するかも=生産コストの増加
客先に出荷された後に不具合が起こるかも=不良対応コストの増加
最悪の場合、市場でリコールが起こるかも=ブランドイメージの低下
資材調達部門が優先順位を間違うと、会社に損失を与えます。
最悪、購入の責任を個人に押し付けられる可能性だってあります。
もし「会社のルールに従う」で問題があると思えば、ルールを変えればいいだけです。
基準が決まっていれば、その基準に従い行動しておけばOKですよね。
会社のルールを無視して、声の大きさだけで担当にルール違反をやらせる、またはやってしまうことは、社会的な法令違反につながります。
※企業のコンプライアンス違反は、近年大きな社会問題にもなっています。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
そのため、購買適性を判断する面接の質問に設定されている事があります。
答えを間違えないようにしましょう。
もし「会社のルールが大事」と答えてみて、反論されるような会社はダメな会社です。
あなたを不幸にしますから、入社しなくてOKです。
そんな会社はブラック企業です。
【購買・資材調達部門の役割】QCDSバランスの最適化って何?
購買・資材調達部門には、教科書的には6つの役割があり、下の表の通りです。
購買・資材調達部門の役割
①資材の調達・購買
②外注管理
③現品(在庫)管理
④原価低減
⑤対取引先窓口としての機能
⑥情報センターとしての機能
でもこんなの、実際にやったことのない人しかイメージできるはずがありませんよね。
もっと具体的に落とし込みましょう。
【購買・資材調達部門の役割】新入社員は3つの役割でいい
新人担当者の役割は、6つの役割うち①~③の部分です。
理由は、①~③の領域は比較的固定した手順でこなせる仕事だからです。
④~⑥はもっと仕事に慣れてきてから力を発揮する領域になりますね。
【新入社員の役割】
①資材の調達・購買
②外注管理
③現品(在庫)管理
新入社員が行う①資材、②外注、③現品(在庫)の管理は以下の表になります。

なにをするかというと、教科書的にはこうなります。
「仕入れ活動を通じて、原価の引き下げと品質向上を図り、生産部門に安定供給する」
もっと実務的に置き換えると、次の回答になります。
「Q(品質)C(コスト)D(納期)S(サービス)のバランスを最適化し利益貢献する」
これで
「QCDSバランスの最適化」はイコール「会社への利益貢献」になる。
つまり、資材購買の重要な役割である。
このことが理解できたでしょうか。
もしあなたが「購買・資材調達の役割は何ですか?」と聞かれたら。
「QCDSバランスの最適化による利益貢献」と答えておけば、まず間違いありません。
では、QCDSバランスの最適化はどうやってけばいいでしょうか。
【新入社員の役割】QCDSバランスの最適化によって利益貢献をする方法
Q(品質)C(コスト)D(納期)S(サービス)のバランスを見える化します。
コツは「自分の家計に置き換えてみること」ですよ。
誰だって、お金と時間が十分にあれば最高品質のモノを買う事ができます。
ですが、実際はそうは行きませんよね。
- 低コストで
- なるべく良いモノを
- すぐに
- サービスの良いショップから
買おうとするはずです。
ネットショッピングでは比較検討が当たり前ですよね。
このときの購買行動の優先度は、買うモノや、買う人によって違います。
①品質が重要であれば、値段は多少妥協するかもしれません。
②納期が重要であれば、サービスが不満でも近所で買うかもしれません。
③価格が重要であれば、時間をかけてでも安いショップを探すでしょう。
この行動基準を会社に落とし込むとこうなります。
①品質重視=開発・設計
②納期重視=工場
③価格重視=経営者
会社にはいろんな部署があり、それぞれの思惑があります。
購買の役割は、各思惑を最適化し、ベストな選択で会社の利益に貢献できることです。
資材調達の役割は、目的と手段を突き詰めると「いい取引先を探す事」になる
QCDS最適化は目的ですが、達成の手段も考える必要があります。
究極の手段は、突き詰めていくと次の事に集約されます。
「良い取引先を見つけ、取引先と共存共栄していくこと」
適正な品質(Q)価格(C)納期(D)サービス(S)すべて有能で協力的な取引先。
これを見つけ出し、協力体制を作っていけば、QCDSの最適化は解決しますよね。
ここでは、この課題は掘り下げずに「QCDSの最適化」の部分に絞って進めています。
まとめ│トラブルを一人で抱え込まないために
トラブルを抱えたときの判断基準を持つことは、仕事をする上でとても重要です。
トラブルを一人で抱え込むと、気分が暗くなり、いつもため息が出ます。
すがすがしい気持ちで出社する事ができませんよ。
こんな状態を長く続けていたら、仕事に行くこと自体がイヤになってしまいますよね。
そんな悩みを解決するために、購買・資材調達としての行動基準があります。
場当たり主義をとったり、目先の利益に迷いが出ると、会社に不利益を与えるからですね。
なので、悩む前に購買・調達担当者の行動基準をしっかりと身につけておきましょう。
そうすることで、仕事のストレスはほぼゼロにできます。
購買・資材調達の仕事って本来はストレスゼロのすばらしい仕事なんですよ!
今回は以上です。