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資材購買歴25年が教える価格交渉の心得10選【苦手や不安を克服】

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資材購買部門にとってコストダウンの交渉は最も重要で難しい仕事のひとつです。

市場競争の激化や新商品開発の停滞などで、営業部門が稼ぐ「売りの利益」が期待しにくい現代では、調達・購買部門が稼ぐ「買いの利益」が企業の業績を左右するといってもいいでしょう。

上司
上司

・今期の目標は年間5%コスト削減だ!

・コスト交渉の時間を増やしてコストを削減しなさい!

こんなふうに、会社や上司から、コストダウンのノルマを課せられます。

苦労している購買部員諸君も多いのではないでしょうか?

購買部員
購買部員

・そんなこといっても、どうしたらいいのか分からないよ!

・あの取引先はいつも厳しいといってるし、言うことを聞くはずがない。

とはいえ、当の購買部員はこんな感じになってしまいますよね。

営業の売り込みや、交渉にはマニュアルが存在します。

資材購買部門でのコストダウン交渉はマニュアルもなければノウハウは個人任せ。

場合によっては会社の方針さえ明確になっていない……

そんな事がほとんどです。

そこで今回は「コストダウンシリーズ」として、資材購買部員に役立つコストダウンのノウハウを何回かに分けてシリーズで書いていこうと思います。

実際に、わたしも年1億2千万円のコストダウンをノルマに課せられているので、毎日が交渉の連続です。

必死になりながらも目標達成していますから、少しは役立つ情報が出せるはず。

初回は「コストダウンにおける資材購買部員の心得」10選を紹介していきます。

コストダウン交渉では、自分の指針を持っておくと、不安や迷いがなくなります。

コストダウン交渉に苦手意識や不安があるならぜひ参考にしてみてください。

なお、指針や交渉の軸がはっきりしていないと、勢いや立場を利用するようなコストダウン方法になりがちです。

狭い業界で、資材購買の評判はすぐに他の会社にも知れ渡りますから、あなたの言動が自社の評判を左右することもあります。

この記事に目を通して「自分は相手を不快にさせない交渉ができているだろうか?」と、再確認してみるのもいいかと。

購買部員がコストダウン交渉に臨む前に知るべき10選

資材調達購買部員がコストダウン交渉に臨むときの心得10のポイント

購買歴25年のわたしがまとめた、コストダウン交渉で気をつけるべき10のポイントは以下のとおり。

1. 自分自身の役割・使命をもう一度確認しろ

2.会社の代表窓口であることを忘れてはいけない

3.値下げの要求は自分の業務のひとつ、気後れは無用

4.取引先は別の会社であることを忘れてはいけない

5.騙したり・うそをついてはいけない

6.交渉に負けそうになったら問題点を探せ

7.事前の準備に時間をかけなければならない

8.値下げの申し入れは、断られるのが当たりまえ

9.相手もプロ、常に先を行け

10. 買わなくてもいいという選択を残しておけ

威圧的になったり、不遜な態度をとるのはプロの交渉人とは呼べませんよね。

そんなダメなバイヤーにならないための心得10選です。

1. 自分自身の役割・使命をもう一度確認しろ

資材購買の仕事はコストダウンだけではありません。

発注・検収、納期管理、不良処理など、ルーチンワークのほうが多かったりします。

日常の仕事をしていると、ついつい資材調達購買部員としての会社での役割や、資材調達としての行動基準を忘れてしまいますよね。

なので、コストダウンという大変な業務に臨むにあたっては、事前に気持ちをリセットする必要があります。

具体的には、自身の行動基準を再確認します。

資材購買としての基本軸というものは、自分自身で決めておけばいいものです。

わたしの場合で言えば次の2つのコトになります。

・常に「使命感」と「危機意識」を持つ

・徹底的に厳しく・妥協しないこと

購買・資材調達の6つの役割と行動基準とは【担当者の悩みを解決!】
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2.会社の代表窓口であることを忘れてはいけない

営業マンが会社の顔であるなら、資材調達購買マンは外部との窓口という意味で同じです。

わたしが気をつけていることは以下の3つです。

1、服装や言葉使いにも注意

2、よい人だと思われたいため、安易な妥協は絶対しない

3、なれなれしくなるな、ビジネスの話では相手と一線を引く

購買部門は「買う側」

ゆえに、普段の言動や言葉使いが「不遜」になっていないか?

これは他のどの部署よりも気を遣っていなければなりません。

つい「不遜」になっていないか?は常に気をつけるようにしています。

仕事によって、自分の人間性がダメになるなんてバカらしいです。

人格が損なわれないように自己管理しておくことも資材購買マンのスキルのひとつです。

とはいえ仕事である以上、良い人と思われたいがゆえの妥協や、親近感の演出はほどほどにしなければなりません。

普段の会話は仲良くしても構いませんが、仕事の話にはいったら「厳しく」「妥協しない」態度で、お互い真剣勝負の関係性を保ちましょう。

 

3.値下げの要求は自分の業務のひとつ、気後れは無用

値下げ要求は自分に与えられた業務のひとつにすぎません。

コストダウンの申し入れに気後れや・気まずさは感じる必要はありませんよ。

相手が可哀想とか、悪いことをしているといった余計な意識は捨てて大丈夫です。

相手が、より利益を稼いで売る事が仕事であるのと同じ。

これが、我々資材購買の仕事です。

・ 厳しい値下げ交渉をすると相手が困るのではないか?

・あまりに厳しい内容で当社から離れてしまうのではないか?

コストダウン交渉において、こちらが心配していることは経験上ほとんどが杞憂です。

4.取引先は別の会社であることを忘れてはいけない

取引先とは利害関係が異なる別の会社、従業員であることを忘れてはいけません。

相手にも言い分や立場があります。

「買う側」の一方的な思い込みや押し付けは、それこそ相手が困ってしまいます。

行き過ぎれば、当社の信頼を失うことにもなりません。

交渉ごとの本質は、お互いの言い分の妥協点を探る作業ともいえますよね。

相手の立場も考え、意見を十分聞いたうえで、それでも論理的にコチラの言い分を通すというのが、プロの交渉といえるのではないでしょうか?

プロの交渉術の具体的な実践方法についても、この「コストダウンシリーズ」の記事の中でまた紹介しますので、参考になさってください。

 

5.騙したり・うそをついてはいけない

1回こっきりのお祭りの露店などと違い、企業というのは長く存続し続けるものです。

まして、優良な取引先とは継続取引をすることで大きなメリットが生まれます。

当然ですが、目先のノルマのために騙したり・うそをつくのは厳禁です。

そのときには上手く成果をだせたとしても、全体のデメリットが大きすぎますからね。

ましてや、法律違反は最悪の交渉です。

よく「法律違反なんてそんなにあるものではないでしょ?」という意見があります。

ですが「下請法」を代表する企業間取引の法律は、年々解釈に変化があります。

昨年まで大丈夫だったコトが今はダメ、なんてこともありますから常に注意が必要です。

たとえば「一律5%の値引き要請」を半期ごとに文書でいっせいに配布している会社は多いと思いますが、これって今やると法律に抵触する可能性があります。

結局「はじめから不誠実なコストダウン交渉はしない」というのが正しい購買行動です。

「下請法」は公正取引委員会のホームページで特に「毎年の勧告一覧」を参考に確認することができます。

 

6.交渉に負けそうになったら問題点を探せ

そもそもお金を払っている側のお客(購買側)が、交渉に負けるはずがないのです。

もし交渉で負けそうな場合は、何かしらの問題点があります。

交渉ごとで上手くいかないと、すぐに上司を連れ出してみたり、感情に訴えて泣き落としに出たりする場面を見かけます。

これは、間違いです。

感情的になる前に、こちら側の問題点を見つけることが優先課題。

このことをあたまに入れて交渉しましょう。

7.事前の準備に時間をかけなければならない

交渉が上手くいかずに感情に走る人は、まず行き当たりバッタリで交渉に臨んでいるようです。

相手もコストに関しては必死です。

こちらも相応の戦略とデーターを準備しておかなければ、失敗するのは当然ですよね。

 

コストの交渉においては、準備8割交渉2割ぐらいのバランスでちょうどいいと思います。

・コスト交渉のストーリー(相手を本気にさせる仕掛け)

・取引の経緯(付き合いの歴史)

・購入金額推移

・取引先の評価状況

・コスト、相場の分析

・コストダウン範囲の妥当性

このあたりのデータベースは常日頃から整備しておくといいでしょう。

8.値下げの申し入れは、断られるのが当たりまえ

値下げの申し入れは、相手から断られてもともとです。

逆に言えば、失うものは何もなし。

これぐらいの気持ちで交渉に臨まなければ、コストダウンの申し入れはできません。

実際に、はじめはあっさり断られるでしょう。

わたしの経験では、特に新人のころは相手にもされませんでしたからね。

でも、こういった経験が悔しさとなります。

次の手を考えたり、説得の方法を変えたりと、スキルアップのキッカケになります。

「コストダウンは断られてもともと」

これぐらいの気持ちが持てることも、資材購買マンの適性かもしれませんね。

9.相手もプロ、常に先を行け

「コストダウンは断られてもともと」

いつまでもそんな気持ちでは、資材購買マンとしてのスキルがあがりません。

いつまでも新人でいられないわけです。

資材購買マンは相手の営業マンに、なめられたらおしまいです。

なので、一線を引いたり、いつも気を張っている事が大切になるわけです。

相手になめられないようになるにはどうすればいいか?

これは、単純化すると「先手必勝」です。

仕事においては、つねに準備をして、相手より先回りして考えること。

資材購買は「買う側」の立場という事が理由でしょうか?

「売る側」の営業マンに比べて、勉強や調査に時間を使う人が少ないように感じます。

自社の営業マンと比べて、自分はどうなのか?

冷静に比較してみることをお勧めします。

自社の製品の特性や、製造工程、源流からのコスト参画など、足りない部分が見えてくるのではないでしょうか?

逆に、これができるようになると、どんなに若くても、軽く見られることはないようです。

10. 買わなくてもいいという選択を残しておけ

「どうしても、この会社から買わなければならない」

そう思うと交渉も思い切ってはでないものです。

こんなときは大体の場合、相手もそう思っているものです。

なので、結局交渉は上手くいきません、

「ダメなら、他の会社から買ってもいい」

という選択肢をいつも意識しておくことで余裕が生まれます。

「準備」にも通ずることですが、2の矢3の矢を交渉前から準備しておけるかどうか?

これも実際のコストダウンの実績には現れない資材購買マンとしてのスキルです。

取引先の新規開拓の業務は、地道に行っていくと、後々のあなたの財産になって行いきますから、忙しくてもめんどくさがらずに継続していきましょう。

まとめ

今回は「コストダウンシリーズ」の1回目として、値引き交渉に臨む上で、資材購買マンが心得ておくべき10個の項目について書いてきました。

この10のポイントは日常の納期の追いかけや、発注業務で忘れがちな、資材調達購買の指針や軸を思い出すために、まとめたものです。

コストダウン交渉は、企業間同士の交渉ごとです。

交渉ごとの本質は、お互いの妥協点を探ることだと書きましたが、最終的なキモは

「あくまで辛抱強く頑張ること」

これです。

これが商談時の効果的武器になります。

ぜひとも成し遂げようとする強い意志が、どんな戦略や脅しよりも効果的だということをお伝えしておきます。

次の記事では、もっと具体的に、

・コストダウンの手法

・交渉のテクニック

・最終価格決定のダメ押しの交渉

など、実践的な内容を書いていきますので、引き続き参考にしてみてください。

お互いに一流の資材購買マンを目指していきましょう!