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購買のプロが教えるコストダウン交渉の始め方│申し入れの手順も解説

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新人君
新人君
「コストダウンをしなさい」って上司から言われるけど、マニュアルもないし、いきなりできないよ…だれか交渉の始め方を教えて…

こんな悩みを解決します。

本記事の内容

1.コストダウン交渉の申し入れ方法【口頭がベスト】

2.コストダウン交渉時の切り出し方【結論から入る】

3.コストダウン交渉の場所の使い分け

4.コストダウン交渉の時間帯【午前中がベスト】

5.コストダウン交渉中のテクニック【質問の使い方】

購買部門でのコストダウン交渉は営業の売り込みと違い、マニュアルもなければノウハウは個人任せ、場合によっては会社の方針さえ明確になっていない事がほとんどです。

そんな状況でいきなりコストダウンしろ!と言われても新人は困ってしまいますよね。

そこで、本記事では資材購買部員に役立つコストダウン交渉のテクニックやノウハウについて現役20年、今も購買部長を務めるわたしが解説します。

わたしも年に1億2千万円のコストダウンをノルマに課せられているので、毎日が交渉の連続です。

必死になりながらも目標達成していますから、少しは役立つ情報が出せるはず。

今回の記事では、あなたがなるべく実践的に使える内容を書いています。

なるべく担当者のダメージがなく、周りも巻き込みながら成果を出せるようになっていますから、コストダウン交渉に悩んでいる方は一度参考にしてみてください。

購買のプロが教えるコストダウン交渉の始め方│申し入れの手順も解説

コストダウン交渉では以下の5つの点に注目してみてください。

少しのことですが、気をつけるのとしないのでは交渉の成功率がグッと変わります。

1.コストダウン交渉の申し入れ方法【口頭がベスト】

2.コストダウン交渉時の切り出し方【結論から入る】

3.コストダウン交渉の場所【使い分ける】

4.コストダウン交渉の時間帯【午前中がベスト】

5.コストダウン交渉中のテクニック【質問の使い方】

順番に説明していきます。

1.コストダウンの申し入れ方法【口頭がベスト】

コストダウンを申し入れる際には、書面がいいのか、それとも口頭で伝えるほうが良いのか?

正解は「口頭で申し入れる」ことです。

なぜなら、文書・FAX・メールでは、こちらの真意や意思や情熱が十分に伝わらないからです。

また、文書で送ったものは文書で答えが帰ってきがちです。

文書だけのやり取りでは、コストダウン交渉が上手くいかなかったときに、値下げができない本当の理由や、相手の反応も確認できません。

なので、コストダウンの申し入れは口頭で申し入れる事が原則となります。

なお、このあたりは「値上げ要求に対するお断りメールは逆効果です│無意味なテンプレ例あり」の記事で解説しています。

値上げ要求に対するお断りメールは逆効果?│こんなテンプレはダメ値上げ要求の文書のお断りメールはどんな理由をかけばいいだろうか?断ったら入荷拒否されないだろうか?購買部としてどう対処すれば正しいのかな?なんて悩んでいませんか?ぶっちゃけ、お断りメールは逆効果ですよ。正解は年収アップのチャンスです。交渉力しつつスキルアップを狙うべき。...

値上げを受ける立場の解説ですが、逆の立場になっただけなので応用できるはず。

目標数字は具体的に申し入れる

申し入れるときには、具体的な目標数字を提示します。

「少しでも安くしてください」ではこちらの真剣さが十分伝わらないでしょう。

具体的な数字を提示する狙いは2つあり、以下のとおり。

① 相手が具体的にその目標金額が可能なのか?を一度は考える

② 購買側は申し入れる金額を十分に吟味する

あなたは相手が応じやすい範囲で、なるべく低い最終価格が想定できているとベストです。

お互いに納得できる妥結価格なら、あっさり交渉が成功することもあります。

余談かもですが、この設定価格を決める能力が、のちのち資材購買部員としてのスキルの差になりますよ。

コスト査定を常に意識して日常業務をこなしていくと、将来コストダウン交渉に強い購買部員になれるので、出世もしやすいでしすし、年収も上がりやすいです。

2.コストダウン交渉時の切り出し方【結論から入る】

コストダウン交渉を口頭で行うということは、面談で行うということです。

コストダウン交渉の切り出し方にもテクニックがあります。

① 業界の動向を説明する

② 自社の経営活動に関連した項目を補足する

③ いきなり本題に入る

④ 面談の趣旨は明確に述べる

面談が苦手な方は以下の手順で行ってみてください。

1 業界の動向を説明する

営業からの情報を参考に、業界の動向を説明します。

相手もよく知っていることなので、間違った情報や、交渉に不利になるような情報を出さないように注意します。

2 自社の経営活動に関連した項目を補足する

「社長の訓示」「年度方針」「営業状況」「その他トピックス」の中から、購買に関する事項をとりあげて説明します。

  • 自社が今後取り組んでいく分野
  • 購買方針
  • 在庫目標

などが主になるでしょう。

3 いきなり本題に入る

「時候の挨拶」「日ごろのお礼」「そのときの旬な話題(天候・景気動向など)」から始めるケースもありますが、コストダウンの交渉はいきなり本題に入るほうが交渉がスムーズに進みます。

常時取引している会社の営業マンが同席していると、どうしてもコストダウンに関係のない話題を進めてきがちになります。

こちらとしても、冷たくあしらうわけにもいかず、交渉の時間を取られてしまいますから、議題が決まっている交渉では、いきなり本題から入るほうが良いわけですね。

特に話し好きの上司などを連れてこられた場合、仕事の話はそっちのけで趣味や旬な話題に熱中する方がおられますから要注意です。

営業マンは一般に「仕事の話は2割、バイヤーの趣味・世間話を8割でよい」とされています。

部長クラスにもなれば、相手もそのあたりのテクニックはわきまえているので、巻き込まれてはダメですよ。

4 面談の趣旨は明確に述べる

いきなり本題に入る事が難しければ「商談の趣旨」「商談できる時間」をバイヤーの側からはじめに伝えます。

そうすれば、相手も重要な話を先に始めざるをえません。

3.コストダウン交渉の場所【使い分け】

コストダウンの交渉は面談で行いますから「自社で行う」「相手先に出向いて行う」「その他の場所を指定」かの3つになります。

どの場合にもメリットとデメリットがありますから、そのときの状態でベストなほうを選びましょう。

コストダウン交渉を自社で行うとき

自社で行う場合にはホームグランドであるという有利さがあります。

時間と費用が少なくてすみますし、場合によってはメンバーを増強することもできます。

また、自社で行う場合には場所も重要視しましょう。

例えば、普段は食堂や会議室で商談をしている場合、コストダウンの交渉を応接室や社長室に場所を移して使い分けることもできますよね。

相手側も通された場所で商談の重要性を判断しますから、使えるものはすべて有効に使うべきです。

取引先の事務所または工場へ出かけて行うとき

逆に取引先へ出向いてコストダウン交渉を行うメリットは以下の点で有利になります。

・無理目な依頼

・大きな金額

・ぜひとも成功させたい場合

特に「相手のトップと話したい」「こちらも誠意を見せたい」ときは、相手の会社へ出かけて交渉したほうがコストダウンの成功率はあがります。

コチラの狙いとしては「取引先がわざわざ来てくれたのに断りきれない」と相手に思わせる点にあります。

もし、担当者(あなた自身)だけで取引先に出向く場合は、上司や役員から事前に趣旨を電話してもらうと、格段に交渉が進めやすくなりますから、覚えておきたいテクニックです。

一方で取引先に出向いてコストダウンするデメリットに「担当者自身のリスク」があります。

わたしの失敗談ですが、以下のことは十分注意してください。

・忘れ物や資料のミスがないようい事前にチェックすること

・ネット環境の不具合もあるので書類の資料も準備すべき

・出張したことで気を緩めない。交渉が終わるまでは緊張を保つこと

・言い忘れに注意。交渉の後からの追加項目はとても言い出しにくい

・出張の費用と効果の兼ね合い(費用対効果)を検討すること

・手ぶらでは帰れないが、あせって希望金額以下で妥協することも禁物

・上司と事前に最低の妥協線を相談しておくこと

・就業時間終了後にかかる出張は夕食に誘われやすいので避けること

 第3の場所で行うとき

まれにホテルや、食事処での交渉も考えられます。

この場合の注意点は相手先に出向くときと同じです。

4.コストダウン交渉の時間帯【午前中がベスト】

交渉をどの時間に行うかによっても、メリットとデメリットが異なります。

相手のことを考えて、一番交渉成功率が高い時間帯を選びます。

経験上ベストな時間は午前10時スタートです。

朝一番

朝イチから交渉時間を設定する場合、取引先へ出かけるときは「決めないと帰れない」というコチラの意気込みを示すことはできますが、取引先側からすると迷惑で非常識に思われてしまいます。

取引先は別の会社であるという認識を持って、押し付けになっていないか、十分精査しなければなりません。

午前中

午前中は頭の中がクリアな状態で、お互いにいい議論ができるので、経験上10時ごろからスタートするのがベストだと考えています。

しかし、結論が出せない場合には、お昼の区切りがあり、終了時間を気にする必要が生じます。

よく「午前中がダメなら、午後も延長すればいい」という方がいますが、相手側からすれば忙しい中、一日中相手をすることは迷惑に思われるかもしれません。

VE/VAが絡んだり、仕様の議論など、お互いに前向きな議論が必要な場合以外は、午後にまたぐ延長は避けたほうが良いでしょう。

午後

午後は午後一番は食後で頭が働きにくく、かといって3時過ぎになれば他の仕事ですでに疲れてしまっています。

議論が長くなると、お互いに疲れてきますよね。

その場合、我慢比べになって相手が折れればいい結果が得られますし、コチラが折れれば悪い結果になってしまう事が多いです。

とくに16時近くになると、お互いに出荷の確認などが気になり、仕事に戻りたくなるはずです。

結局、後日に持ち越しという中途半端に終わることもありますから、なるべく午後は避けたほうがいいでしょう。

夕方・夜

午後からのスタート以上に、コチラも相手も早く終わりたいので、よほどの最終結論まで煮詰まった案件以外は避けたほうがいい時間帯です。

経験上17時を超えて粘られて、いい結果になった事がありませんからね。

お互いに面倒になり、安易な妥協をしたり、結局結論が出ない可能性が高いです。

5.コストダウン交渉中のテクニック【質問の使い方】

交渉が順調にいきそうにないな?と感じたら、合間に質問をはさむこともテクニックのひとつです。

質問を上手に活用すると、交渉を自分のペースに引き込むことができるからです。

たとえば、質問上手なバイヤーは、知っていることでもあえて尋ねたりしながら、交渉の結論までの道のりを計算して質問を使い分ける事ができます。

もし、あなたの上司が当たり前の質問をして恥ずかしいな…なんて思っても、それは作戦のことが多いですから、黙って口を挟まないほうが賢明です。

質問は、多様な使い方ができるので便利です。例えば以下のとおりですね。

・相手の情報が垣間見えたりする

・相手の考えを明らかにできる

・相手を切り崩すきっかけになる

・自己を防御することもできる

多用な使い方ができるので、ぜひ覚えてください。

質問を利用するには以下のポイントを意識すると上手くいきますよ。

・前もって質問を考えておく

・すこし立ち入った質問をしてみる

・ベストなタイミングで最適な質問をぶつけてみる

・相手の言葉を中断させない

・参加している他のメンバーに質問してみる

・質問したら相手から回答があるまでしゃべらない

・回答がにごされても、ころあいを見て同じ質問をしてみる

・事前にリハーサルを行う

そこまでやるの?と思われるかもですが、大事な商談の場合はわたしも実践しています。

とくにリハーサルは大事です。

なぜなら、相手側も同じコトを考えて、隙を見せると逆に質問してくるからです。

実際の交渉では有利な回答を即答していかなければなりません。

場合によっては、答えるべきではない質問もありますから、大きな商談前には特に練習が大事になります。

わたしも失敗して、たびたび上司に叱られたものです。

以下の失敗談を参考にどうぞ。

・相手の質問に答えるべきか、答える必要がないかよくわきまえる

・営業担当の「もしも」質問に引っかからない

・「もしも、下げられなかったらどうなりますか?」「もしも、この金額が限界だとして、どこまで許容範囲ですか?」など、答えてしまうと交渉の答えが見透かされる。

・相手の質問の意味がはっきりしない時は回答しない

・分からないときは「何が聞きたいですか?」と聞きなおす

・商談に際しては、正直に答えることが、必ずしも上手な回答とは限らない

・答えたくないときは「よく分からない」「記憶がない」と回答しておけばいい

まとめ

購買部員にとってコストダウン交渉は、乗り越えるべきハードルの高い仕事のひとつです。

上司からは「もっと厳しく交渉しなさい」などとハッパをかけられますが、担当からすれば「それが難しいんだろうよ」となりますよね。

上司は交渉のときだけ話をすれば良いのに対し、担当者は、常に毎日のように話をしますし、納期や品質で取引先にお願いしなければならないこともあるでしょう。

価格のときだけ「もっと厳しくしろ」といわれても難しいものがありますよね。

ですから、担当者が自身の身を守りつつ、良い成果を出すためには、コストダウンを有利に進めるための手順とセオリーが必要になります。

2回目の今回はコストダウン交渉におけるコツやテクニック、注意点などを順番に紹介しました。

次回3回目では、コストダウン交渉のスタートにあたる「値下げ申し入れの根拠の示し方と注意点」についてお伝えしています。

コストダウン交渉をスタートさせるための大義名分の例、伝え方、注意点について書いていきますので、次回も読んでいただけると幸いです。

では、本記事は以上になります。