資材調達の仕事に「やりがい」なんてあるのだろうか?
メーカーの花形といえば営業や技術ですよね。営業は売り上げを上げれば褒められますし、技術は開発した新商品がヒットすれば英雄です。
一方で資材調達は成果を出しても褒められないし、社長になることもできません。
資材調達はどちらかといえば黒子の仕事です。
・資材購買の仕事のやりがいって何なの?
・資材購買の仕事は楽しいの?
・逆に嫌なことはあるの?
・実際に仕事をしている人の感想を知りたいな。
こんな疑問を解決します。
本記事の内容
・資材調達部門のやりがいまとめ
・資材調達部門のツラさ
・資材調達が向いている人の特徴
本記事では現役の資材調達部長である筆者が、入社からの25年間で感じてきた仕事の「やりがい」をまとめました。
購買というと購買部のパンを思い出す人が多いように、決してメジャーな仕事ではありませんが、実は楽しく、やりがいのある仕事です。
購買部員になると新人から管理職まで、そのときそのときの「楽しさ」や「やりがい」がありますよ。事実、ボクも「毎日、会社に行くのが楽しみ!」な状態です。
「わたしも楽しく仕事ができる職場で働いてみたいよ!」って方、あなたも購買部員になってみませんか?
現役購買部長が考える資材調達部門のやりがいまとめ【結論は好奇心】
わたしは、2000年から25年間、資材調達の仕事をしています。
新人⇒リーダー⇒課長⇒部長と役割が変わるごとに「やりがい」を感じてきましたが、結論、資材調達部には4つの「やりがい」があります。
・モノづくりに関係することができる
・利益に直接貢献できる
・好奇心が満たされる
・人を育てることができる
上記のとおりです。
資材調達部員にはT型のスキル(シングルメジャー)が必要です。
横に幅広く、縦に深い知識が必要な仕事だから、好奇心がある人にとっては無限にやりがいを見つける事ができます。
ここが購買職の最大の魅力です。
モノづくりに関係することができる
資材調達部門はモノづくりに関係することができないと思われていますが、実は大きくかかわりがあります。
自分の購入したものが自社の製品に使われて、店頭に並んだり、誰かの役に立つところがモノづくりの「やりがい」ですよね。
下の図は資材購買調達の主な管理項目です。
それぞれの管理項目で、密接にモノづくりに関係する事ができます。
資材管理でモノづくりにかかわる
資材調達部門は原材料の資材管理で自社のモノづくりに大きくかかわることができます。
設計部門や製造部門に対して、品質の良いもの、生産性の高い原材料を提案できる。
このことで、自社の製品に大きく貢献しています。
自分の提案した原材料によって仕事の達成感が得られると「やりがい」を感じます。
・現場が「使いやすい」と言って喜んでくれる
・設計部門が知らなかった部品を提案して喜んでもらえる
こんなときに「もっとがんばろう!」と思えますよね。
外注管理でモノづくりにかかわる
資材購買は外注さんの製品を通してモノづくりにかかわることができます。
外注管理とは?
自社で製造できない工程を委託したり、製造能力が足りない製品を委託して
他社に生産してもらい、購入する仕事です。
製造場所が外注になるとダイレクトにものづくりに関係することができる。
外注委託は発注から納期・品質の管理まで、すべて自己責任です。
納期を急ぎで依頼して間に合わせてもらえる
取引先と協力して目標を達成したとき
こんなとき、大きな喜びを感じることができます。
長い付き合いの協力会社とは一体感が生まれます。
会社の垣根を越えて達成の喜びを共有することに「やりがい」を感じられます。
現品管理でモノづくりにかかわる
現品管理は入出庫の仕事のほかに在庫管理の側面もあります。
手配した部品を社内が必要とする時期に納入する
在庫をなるべく減らした状態で欠品しない管理をする
こんなときに達成感が得られます。
在庫はお金と同じです。
在庫を少なく保ちつつ、使用時期に間に合わせることが購買の役割であり技量となります。
自分のスキルで会社のモノづくりに貢献できるところに「やりがい」を感じますよ。
利益に直接貢献できる
購買業務の重要な仕事である原価管理のスキルは会社の利益に直結します。
例えば、もし月に1,000kg使用する金属材料をキロ当たり10円コストダウンすることができたとします。
そうすれば単純に1,000Kg×10円=10,000円の利益を生み出したことと同じです。
ここで生み出したお金は「売り上げ」ではなく「利益」です。
営業利益率が8%として、10,000円の利益を出すには、125,000円の売り上げが必要ですよね。
利益は営業や設計部門が出すイメージがあると思いますが、実際には営業や設計部門は原価分の回収をするのが精一杯です。
営業や製造が、がんばって125,000円を売り上げなければ出せない「利益」を資材購買は個人で生み出すことができます。
プライドがやりがいになる。
利益率の高い会社には、優秀な資材購買マンが必ず存在します。
自分の仕事が会社の利益に直結することを実感できると責任感が生まれ「やりがい」につながります。
実は、利益を出すのは資材購買。
資材調達部門は「利益創出部門」とも言われています。
好奇心が満たされる
資材購買マンにはT字型の知識が求められます。
資材購買に必要なもの=横に広い知識と、縦に深い専門分野です。
参考に、ボクが考えた購買職のスキルマップは以下のとおり。※クリックで拡大
身につける知識は無限にあるから、飽きることなく続けられる仕事になります。
しかも、知識は個人のスキルとして積みあがっていくものばかりです。
- 調達品の製造工程
- 調達品の特徴
- 業界・市場動向
- 市場価格の感性
- 工場管理・コスト管理手法
- 契約・法務関連
- 時事情勢
- マーケティング
- 文章スキル
- ITスキル
- 海外の企業事情
- 外国語・文化・歴史
横に広い知識を身に付けながら、その中の一つ一つをさらに縦に深く学ぶこともできます。
例えば、調達する原材料の分野だけでも以下のようにたくさんあるから、好奇心旺盛な人には大きな「やりがい」を感じることができます。
- 鉄材料
- 非鉄材料(胴・アルミ)
- 工具鋼
- 樹脂
- 紙類
- 油脂類
しかも座学ではなく、現場で学べるのは最高の環境ですよね。
仕事をしながら、これだけの知識を身に付けられる業種も珍しいです。
資材調達のプロはモノの価格と価値が分かる
資材調達のプロはモノの価値が分かるので、お金の知識と使い方も上手になります。
資材購買を10年ほど担当すれば、世の中のたいていの原価は計算できたりします。
マックのコーラは1円とか、カローラは80万円ぐらいかな?とかです。
さらに、知らない製品でも工程を見れば、製造原価が計算できるようになります。
(※地価や減価償却、労務費の平均、原料相場なども知る必要がありますが)
頭に入れるべきことが多いぶん、確実に個人スキルとして、強みになりますよね。
様々な分野の専門知識を幅広く身に付けることで、自分のスキルを高めていける。
これも資材部門のやりがいの一つです。
資材購買のスキルは「個人」としての価値が上がる
これからは副業の時代とか、個人スキルの時代、リストラの時代だとか言われています。
でも、購買スキルがあれば、まったく動じることはありません。
個人スキルを生かして「転職」や「副業」でも勝負ができますし、幅広い知識を生かして「投資」に生かすことも可能だからです。
資材購買のスキルは「趣味」にも生かすことができる
資材購買で取引先に海外企業が多い場合は、外国語のスキルを伸ばすこともできます。
旅行が好きなら趣味にも生かせますよね。
たとえば、わたしの場合は英語と韓国語ができるようになりました。
普段からメールで英語に慣れていますし、来客には通訳がいますが、ヒアリングだけは鍛えられますから、海外旅行にいっても安心です。
余談ですが、語学と海外取引のノウハウがたまるので「輸入セドリの副業」も余裕でできちゃいますよ。(月に10万円ほど稼げます)
人を育てることができる
人を育てていくコトは大きな「やりがい」につながります。
自分の経験を伝えることで、弟子というか跡継ぎを育てる感覚に似ています。
特にやりがいを感じる部分は以下のとおり。
- 自分が得た情報を体系的にまとめて知識を共有
- 社内セミナーを開いて後輩の教育
- 後輩からの相談や疑問を解決
資材調達の仕事を上手に体系化できたときに「やりがい」を感じます。
原価の指標とか計算の方法とか、スキルマップの構築など。
例えばこのブログもそうですが、その資料って自分が職場を辞めたあとも残りますよね。
何十年にもわたって会社の後輩の役に立ち、自分の功績も残すことができると思うと「やりがい」を感じますよね。
資材調達の仕事がつらい瞬間
資材調達の仕事は基本的に楽です。
つらいことは少しだし、自分で解決できるからほかの職種に比べて恵まれているのかなと。
資材購買調達の仕事がつらい状況は次の3つだけです。
①個人で判断しなければならないとき
②取引先と社内の間で板挟みになるとき
③取引先が事故や災害にあったとき
上記の詳細は以下の記事で解説していますから、気になる方は参考にどうぞ。
≫資材調達25年の結論。購買の仕事がつらい理由は3つだけ│解決できる
資材調達の仕事が嫌になる瞬間
資材調達の仕事では「やりがい」がある一方で「嫌になる瞬間」も当然あります。
それは自分の理念と合わないことをしなければならない瞬間です。
- 間違っていることをしなければならないとき
- 明らかに無駄な仕事をしなければならないとき
- 相手の気持ちが理解できるとき
経験を積むと正しい知識もたまっていきますから「個人的な理念」と「仕事の方向性」がかみ合わない場合も当然出てきます。
そうなると、自分の気持ちを殺しつつ、仕事と割り切る場面も出てきますよね。
例えば、製造業では、リサイクルや環境対策が義務付けられていますが、リサイクルなんてまじめにやってる先進国は日本だけです。
しかも、現実にはリサイクルはされていない。科学的には環境にも原価にも悪影響です(温暖化は政治の道具にすぎない)
政治的な背景で日本の製造業が衰退した現実はとても悲しいものがあります。
科学的な知識を深めると、事実とは違うことに向き合わなければならない瞬間が必ずあります。
それが「利権」とか「利益」とか「ずるさ」につながっていくので、心が病やみそうになります。
また、日本は災害の多い国でもあります。
取引先が被災して大変な時でも、無理なお願いをしなければならない時があるから心が苦しくなります。
このあたりは、製造業に関わっていないと理解できないかもしれませんが、以下の記事に詳しく解説しています。
≫製造業のサプライチェーンBCP対応とは?現役の調達購買部長が解説
資材調達が向いている人の特徴
資材購買調達に向いているのはこんな人です。
・優先順位がつけられる人
・クイックレスポンスが出来る人
・購入品そのものに幅広く興味が持てる人
・不遜にならず謙虚な人
・責任感のある人
「だいたいあってるな!」と思えばあなたの適性はばっちりだから、難しく考えずに挑戦すればOKです。
基本的に、資材調達の仕事は以下の能力があれば80点は取れます。
- 優先順位をつける力
- クイックアウトプット
なお、向いている人の適性については以下の記事で解説しています。現役の部長が採用者目線で書いたから参考になるかと。
≫購買部長が教える資材調達に採用されやすい人の適性5選【凡人OK】
まとめ
ボクが感じる資材購買業務の「やりがい」は以下の4点です。
・モノづくりにかかわることができる
・利益に直接貢献できる
・好奇心が満たされる
・人を育てることができる
やりがいは、働く業界や、その人次第ですが、個人的には「好奇心が満たされる」と言う部分が一番のやりがいになっています。
資材調達の仕事では常に勉強が必要ですから、知識の蓄積に「やりがい」を感じられる人は資材調達の仕事に向いています。
さらに、資材購買は仕事をしながら個人のスキルを高められる珍しい職種で自身のキャリアアップ転職や副業のスタートにも有利です。
25年勤めた結論として、個人的に大変おすすめできる職業だから、自身を持っておすすめめします。
少しでも興味を持った方は、以下の記事を参考にしつつ資材購買の道を目指してみて下さいね。
≫購買・資材調達への就職、転職完全ガイド│25年のノウハウ集大成です
では本記事は以上です。