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【悲報】悪い円安に対応できない購買部門は不要です│3つの行動基準

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新人君:「悪い円安とか言われているけど、購買活動に影響があるのだろうか?
購買としてどんな点に気を付けなければならないかな?」

こんな疑問を解決します。

本記事の内容

・円安の基礎知識と購買活動への影響

・購買職としての行動基準

・断るだけの購買部門はいらない

本記事を書いているわたしも、購買職25年目のキャリアのなかで、これほどの急激な円安とインフレの同時進行は初めてです。

まして、円安すら経験したことのない新人バイヤーは、いったいどのように行動したらいいのか困ってしまいますよね。

そこで、本記事では前半パートで「円安の基礎知識」を後半パートでは「購買職の取るべき行動」について深堀します。

大学で経済学を6年間選考し、国際経済学でインゼミ大会にも参加した経験を活かしつつ、書いていきますので、理系バイヤーよりは信憑性がある記事になっているのかと。

ではどうぞ。

【悲報】悪い円安に対応できない購買部門は不要です│

まずは円安の基礎知識の理解から。

結論:円安は今後も続きます。

急速な円安が進んでいますね。

為替レートは2022年4月20日には一時1ドル=129円台になりました。

これは約20年ぶりの円安水準ですが、今後も円安は続きそうです

中には1ドル=200円に達するという見方もありますよね。

というのも、今の円安の背景は以下の状況が要因だからです。

・日米の金利差
・日本のGDP(国力)は低下していく

つまり「日本に投資価値がない=円の価値が下がる」状況なんですね。

円安の影響【基礎知識】

円安になると、次のようになります。

・輸入品の価格が高くなる(輸出品は高く売れる)

・日本は資源のない国なので、購買品の値段は上がる

・内需は冷え込む

基本的に購買品の価格が高騰していく未来ですね。

悪い円安になる根拠

従来、日本の製造業にとって円安はプラスだとされてきました。

しかし今回は「悪い円安」になるのではないかと懸念されています。

理由は以下の3つです。

1. 海外での現地生産が進んでいるから

2. 海外でも高付加価値の製品ができるから

3. 日本人の給料が上がっていないから

順番に解説を加えます。

1. 海外での現地生産が進んでいるから

 

日本の製造業は加工貿易によって発展してきました。

素材を輸入して、日本国内で製造を行い価値を付けて輸出するという仕組みです

わたしが学生だった1980年代には「ジャパンアズNO1」といって、日本製の製品が全世界で圧勝し、日米貿易摩擦が大きな問題となっていました。

経済学界では、貿易黒字と円高の関係性が大きく議論されていたほどです。

今とは逆に超円高の世界線だったわけですね。

その結果、海外での部品調達比率を一定数保つという協定が交わされ、現地生産が一般化し、徐々に円高傾向は加速していきます。

さらに2011年の東日本大震災もあって、多くの企業が工場の海外移転を進めました。

経済産業省の2020年工業統計調査によると、製造に関する「従業者4人以上の事業所」の数は、2014年の20万以上から18万1877に減少しています。

 

2. 海外でも高付加価値の製品ができるから

 

工場の海外移転と自動化は、製造ノウハウの外部流出につながります。

世界各地で同じようなモノづくりができるようになったので、国内生産で付加価値を価格に転嫁して販売することはできません。

国内投資は停滞し、設備が陳腐化して付加価値を下げるという悪循環を生んでいます。

実際、日本の金属材料はトップレベルの技術を持っているにもかかわらず、赤字続きで新規投資ができていませんよね。

一方で、中国の工場は最新の機械をガンガン導入して、技術レベルも日本と近いところまで迫っています。

3. 日本の物価が上がっていないから

 

日本は40年近くほとんど物価が上がっていないという、めずらしい国です。

その証拠に1980年時点との物価を比較すると、以下のとおりです。

物価
アメリカ 2.6倍
ドイツ 2.0倍
イタリア 5.4倍
日本 1.1倍

 

海外から素材などを購買するときに、為替が変わっていなくても相対的に購買力が下がっているということです。

加えて、今回の円安ではコロナによるサプライチェーンの混乱で素材価格が高騰しているという状況……

これがファクト(事実)です。

では「円安の影響」がわかったところで

「じゃあ購買職はどうすればいいの?」

上記の部分を順番に解説していきます。

交渉できない購買部門は不要です│3つの行動

円安時における購買職の行動は3つです。

1.値上げはあたり前として交渉する

2.値上げ実績をリスト化

3.原価低減活動を推進

順番に解説します。

①値上げは当たり前として交渉する

値上げは当たり前として交渉する場合、以下のことを気を付けます。

「原価の3要素に分解して交渉する」

原価の3要素とは?

・材料費
・労務費
・費用

値上げの根拠がどの部分にあたるかによって、妥当な金額が変わってきますので、値上げを認める代わりに、上記はきっちりと計算します。

このあたりの基礎知識が不安な方は以下の記事で解説しています。

調達購買部員が値上げを受けた時の対応【6ステップで解決できます】

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調達購買部員が値上げを受けた時の対応【6ステップで解決できます】取引先から値上げ要請を受けて一人で悩んでしまっていませんか? 本来、購買部門は様々な理由で値上げ交渉を受けることがあります。 ...

断るだけの購買はローバリューなバイヤー

 

買い手が有利だった今までは、購買職は「値上げは断固お断り」の立場を貫いていましたが、円安下では若干変えていく必要がありますね。

というのも、取引先の仕入れ価格が上がった分は、販売価格に徐々に反映されるからです。

例えば、1ドル=100gの素材購入する場合、1ドル=100円であれば、100円で100gの素材が買えますが、1ドル=110円であれば、100円で約91gの素材しか買えません。

ここで、何も背景を知らずに「いや今までどおりの価格じゃないと買えないよ」なんて言っていると「じゃあ結構です」となってしまいます。

値上げ要求に対するお断りメールは逆効果です│無意味なテンプレ例あり」の記事にまとめたとおり、円安時の「ただ断るばかりの交渉」にはリスクしかありません。

値上げ要求に対するお断りメールは逆効果?│こんなテンプレはダメ値上げ要求の文書のお断りメールはどんな理由をかけばいいだろうか?断ったら入荷拒否されないだろうか?購買部としてどう対処すれば正しいのかな?なんて悩んでいませんか?ぶっちゃけ、お断りメールは逆効果ですよ。正解は年収アップのチャンスです。交渉力しつつスキルアップを狙うべき。...

②値上げ実績をリスト化

値上げは仕方がないとしても、購買部員の仕事は値上げした後の対応で差がつきます。

以下の項目をリスト化しておきましょう。

・値上げの要因
・値上げの申し入れ日
・要求された適用時期
・実際の値上げ時期
・申し入れ金額と妥結金額

値上げの要因が改善されたら、値戻しの値引き交渉が必須です。

今は値上げを認めるけれども、同時に次の値引きのことも考えておきます。

円安時には様々な品目で値上げを申し入れされます。

・鋼材
・伸銅品
・鍍金液
・洗浄液
・加工油
・バレルなどのメディア類
・樹脂材
・ビニール
・梱包資材
・電気・ガス
・燃料
・送料

「円安=輸入品の価格が上がる」なので、資源のない日本では原料費が軒並み上がるためです。

例えば、原油価格が上がれば、プラスチックやビニールなんかも値上がりが起こりますよね。

段ボールとかプチプチなどの梱包資材費は、製品に割り振ると単価影響が非常に小さいため、値上げ分を自社でねん出することが多いです。

売値への転嫁ができないから、いつかは値戻しをしなければなりません。

その際に「何が原因で」「どの程度値上がりしたか」の「モノサシ」を持っていないと、何もできませんよね。

基準がない状態では交渉を切り出すことも、目標価格を決めることもできないですからね。

③原価低減を推進

標準原価と実際原価

上の図はわたしが作成した原価低減の構造図です。

悪い円安の時は、図の下の方にある<改善ポイント>の部分を強化していきましょう。

つまり、社内改善に力を入れます。

抜き出すと以下のとおり。

分類 具体的な改善項目
①材料差異 購入金額、歩留まり
②加工費差異 稼働ロス、工数ロス、工程ロス
③製造経費差異 購入金額、歩留まり、輸送費

具体的な活動は「購買原価低減活動のポイント3選│資材調達歴25年の部長が教える!」の記事を参考に進めてみて下さい。

購買・資材調達歴25年の部長が教える!原価低減活動のポイント3選
購買原価低減活動のポイント3選│資材調達歴25年の部長が教える!購買・資材部門で働いていると「原低」という言葉をよく耳にするようになります。 「原低」とは、原価低減活動のことです。 原価低...

円安で利益率が改善することもある

 

購入品が値上がりした分を社内改善で吸収しつつ、営業を通じて製品へ実際の値上げ額以上に価格転嫁をすることで、じつは値上げ前よりも、社内の利益率が改善します。

実際に弊社の社長なんかは、逆に材料メーカーからの値上げを喜んでいる節がありますからね。

製造業は、これまで20年以上、海外工場との競争にさらされていたため、定期的なコストダウンに悩まされていました。

今回は「やむをえない値上げ+材料の入手難」という状況から、値上げが認められやすい環境が整っています。

メーカーも値上げを認めないとモノが入ってこない状況を理解しているため、絶好の値上げチャンスなんですね。

結果として、メーカーも製品売価を上げることになり、実生活では商品が値上がり(インフレ)しますが、ここは仕方ありません。

注意点:会社の利益は上がっても給料は上がらない

 

購入品の単価は確実に20%ほど上がっていますし、購買部門と営業部門が合理的に仕事をすると、インフレが促進されます。

例えば、アメリカではすでにインフレが加速していて、2022.4月の消費者物価指数(CPI値)はなんと8.5%です。

日本ではあまり報じられていませんが、アメリカのガソリン価格は1年間で58%も上昇しており、年収が上がっているから何とか耐えられているという感じです。

世帯収入が低いインドネシアなどの途上国では暴動が起きています。

日本は良くも悪くもアメリカの影響を受けるから、この流れは確実に日本にもやってきます。

身近な例をあげると以下のとおり。

・ガソリン価格は近年で2倍

・電気・ガス料金は10%値上げ

・吉野家の牛丼価格が10%値上げ

・すしローの一皿が150円に値上げ

そして、アメリカと異なる点が一つあり「日本人の給料は上がっていない」ですね。

つまり、デフレです。

難しい経済の話が分からなくても、上記の事実は知っておくべきですね。

実質賃金指数
出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」

 

上の表は厚生労働省が出している「毎月勤労統計調査」から実質賃金指数をグラフ化したものです。

アベノミクスで景気がいいと思っていた時代も、賃金は下がり続けています。

インフレとデフレが同時に起きることを「スタグフレーション」といいますね。

スタグフレーションの状態は以下のとおり。

・物価が上昇

・給料は上がらない

・預貯金などの資産価値は目減りする

優秀な購買部員が仕事を頑張ると、あなたの私生活が貧乏になる……

これがこれから起こる未来ですよ。

まとめ:有能な購買マンは資産防衛も考える

購買の仕事をしていて、わかった事実は以下のことでした。

・購入品の価格が上がって値上げもするからインフレする

・会社は利益が出ても従業員の給料を上げないだろうな

事実、日本企業の内部留保はGDP並みに膨れ上がっています。

上記から、悪い円安→インフレなのに給料が横ばい(スタグフレーション)は今後確実に起こる未来かなと。

途上国では、通貨が弱くなり(円安)、物価だけが上がって(インフレ)格差が広がる……という現象が起きます。

日本も徐々に国力を落とし、途上国に近い経済圏になると思います。

だって、少子高齢化で成長しないのだから当然です。

日本円の価値は落ちて、しかし輸入に頼っている生活必需品の価格は上がっていきます。そうなると生活は苦しくなりますよね。

じゃあどうすべきなのか?

会社に頼りきる人生がリスクになる未来

結論は、会社に頼り切る人生がもっともリスクが高い人生なのかなと。

ありきたりかもですが、できることは3つです。

・年収を上げる

・個人で稼ぐ(副業or独立起業)

・資産を増やす

事実、今は副業×投資ブームですよね。

年収を上げる方法は以下の3つしかありません

①とにかく残業

②スキルを上げて転職

③仕事をサボって副業&独立

わたしの経験上、現実的でもっとも手堅いのは「②スキルを上げて転職」です。

資産を増やすのはすぐには無理だから、現実的には以下のとおり。

①節約しつつ、コツコツ積み立て

②ギャンブル投資で一発逆転

③資産を守りつつ、投資チャンスを待つ

個人的には投資に自分の時間と感情が左右されるのが無駄だと感じているため、長期投資が好きですが、投資判断は人それぞれですね。

なお、経済学では、先が読めない状況で有力なポートフォリオは以下のとおりです。

・資産を6等分する

・現金、土地(ゴールド)、株式をそれぞれ円とドルでもつ

逆に、もっとも資産価値が減りそうなポートフォリオが「円で貯金」です。

だから、いま日本円以外の将来有望な投資先に少しずつ資産を動かすべきなのかなと。

わたしも米国株メインでしたが、最近ビットコインにも徐々に資産をシフトしています。

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とはいえ、ビットコインに全力投資ではなく、ポイントなどの無料でもらえるものでリスクヘッジ以上のリターンを期待しつつ、様子を見ている感じです。

投資は自己判断ですし、未来は誰にも予想できませんが、時代の変化を感じ取って小さく動いておくことは大切かなと。

せっかく、経済の変化を敏感に感じ取れる職種についているのに、会社の業務だけに生かして自身の生活に生かさないのはもったいないですからね。

では、今回の記事は以上です。