今回はこんな疑問にお答えします。
購買、資材調達部員になられた皆さんが業務を行うにあたっては、守るべき法律や条例があります。
そのなかで、最も気をつけなければならない法律が「下請法」です。
法律というと、難しい印象がありますよね。
今回は、現役の資材部長の筆者が初心者にも分かりやすいように、大事なポイントだけ説明をします。
資材調達の仕事に関わるバイヤーの方は一読ください。
ポイントは3つしかないので、一度読めば簡単に習得できますよ。
資材調達業務で注意すべき法律【下請法の3ポイントをやさしく解説】
資材調達の業務をするうえで、下請法のポイントは3つあります。
1、[適用範囲] 下請法の概要
2、[義務行為] 発注側がしなくてはならないこと
3、[禁止行為] 発注側がしてはいけないこと
さっそく、順番に説明していきましょう。
1、下請法の概要(適用範囲)
まずは下請法の中身の概要から。
下請法は下の3つから構成されています。
①「目的」
②「親事業者・下請事業者の定義」
③「親事業者の義務・禁止事項等」
重要なのは、②の「親事業者・下請事業者の定義」
どんな事業者が下請法の対象になるのか? ですね。
適用範囲は会社の資本金の規模によって変わります。
例えば、以下のようなケースが一番メジャーです。
・発注側の資本金が1千万円超3億円以下の場合
・サプライヤー側は資本金1千万円以下が対象となります。
2、下請け法における親業者の義務
下請法では、発注側に4つの義務があります。
下請法上で、バイヤーがしなければならないことですね。
①書面の交付義務
②支払期日を定める義務
③書類の作成・保存義務
④遅延利息の支払い義務
①~③は簡単に言えば「注文書をきちんと発行しましょう」ということです。
普通に注文書を出せていれば、日常で気にする必要は無い部分です。
大事なポイントは「④遅延利息の支払い義務」
親事業者が下請け代金をその支払期日までに支払わなかった場合。
下請け業者に対し物品などを受領した日から、60日を経過した日から実際に支払いをする日までの期間について。
その日数に応じ当該の未払い金額に年率14.6%を乗じた額の遅延利息を支払う義務があります。
親会社よりも立場の低くなりやすい下請けの事業者を守るために、支払いの遅延をしてはいけないということです。
3、発注側がしてはいけないこと(禁止行為)
発注側がしてはいけない遵守事項として11項目があります。
本記事では、大事な4つを抜粋しました。
①下請代金の減額の禁止
②返品の禁止
③買いたたきの禁止
④購入・利用強制の禁止
順番に解説します。
①下請代金の減額の禁止
決定した代金をサプライヤーに責任がないにもかかわらず発注後に減額してはならない
②返品の禁止
品物を受け取った後に、明らかにサプライヤーの責任における不具合品などを返品することは問題ないが、それ以外の場合で受領後に返品してはならない
③買いたたきの禁止
代金を決定する際に、通常支払われるべき対価に比べて著しく低い額を不当に定めてはならない
④購入・利用強制の禁止
正当な理由がないのに、発注側の指定する製品・原材料等を強制的にサプライヤーに購入させたり、強制させてはならない
上記の4つを理解すれば、購買実務で困ることはありません。
それでも下請法の実務で困ったらQ&A形式の書籍を参考にすると解決しやすいです。
下請法は定期的に見直すべき
下請法は、時代背景で解釈が変わるので、定期的に見返しておく必要があります。
例えば、以前なら当たり前だった一括コストダウン要請。
(「一律5%のコストダウンをお願いします」みたいな文書です)
今は禁止事項になっていたりしますので、文書で出すのは控えたほうがよかったりします。
変化を知るために、国や地方自治体で「下請取引適正化推進シンポジウム」が開催されています。たとえば以下のとおり。
ネットで検索し、定期的に参加するといいと思います。
まとめ
発注側は下請法を理解し、サプライヤーとともに存続する良い関係つくりに努力しなければなりません。
下請法は、悪いことをしようとしなければ、守っていける法律です。
日本では当たり前の感覚で運用することができると思います。
たまに見返して、戒めとして使うといいでしょう。
逆に海外取引では、下請法の概念はまったく通用しないので注意したほうがいいですね。
今回は以上です。