資材調達部は自分で買うもの、買う量、納期を決めることができません。
しかし、管理の上では「在庫は資材調達部の責任」となってきます。
なんかおかしいですよね?
・自部門で決めたわけでもないのに、何で在庫管理が資材の責任なの?
・自部門でコントロールできないものを管理できるわけがない、、
・在庫の管理はあきらめようか、、
若手はいつも、ジレンマに悩んでしまいます。
今回は「なぜ、在庫管理が資材購買の責任であるのか?」について解説します。
本記事を書いているわたしも、資材調達部で25年働いています。
25年間、毎年会社方針で「在庫削減30%」の課題が与えられます。
営業や工場の情報どおりに準備しているのに、、、
なぜわれわれ、資材調達部が在庫を削減しなければならないのか?
こんな疑問を感じながら活動してきました。
ですが、この悩みは、資材調達部の役割に注目すると解決できます。
・在庫の削減が調達部の責任である事に納得できていない方
・もやもやを抱えて、ときに他部署に責任を押し付けそうな方
わだかまりがある状態で仕事をすると、他部署と険悪になったりします。
それでは、資材調達の役割の一つである「円滑なコミニュケーション」ができません。
資材購買部員のこだわりが、会社のみんなに迷惑をかけてしまいますよ。
この記事を読めば、明日から納得して在庫管理活動ができるようになります。
購買品を選べない資材調達部に在庫管理の責任がある理由【役割の一部】
在庫の管理責任が購買・資材調達部にある理由は3つです。
1、資材調達部に発注量を監視する役割があるから
2、資材調達部に価格や手配先を決定する役割があるから
3、在庫管理の本質はルールつくりだから
順番に疑問を解決していきましょう。
1、資材調達部に発注量を監視する役割があるから
資材調達部門には、確かに自部門で購買品の「種類」「量」「納期」を決められません。
ですが、その代わりに、他部署の購入要求を監視する役割があります。
購入品の量や納期を決める要求側は、いいものを、より多く、速く欲しいわけです。
適正な状態よりも「多い量を」「早い納期で」手配してくる可能性が高いですよね。
また、必要なスペック以上の「高級なもの」を手配してくるかもしれません。
そんなことを許していたら、企業の収益を悪化させてしまいます。
それを防止するためのルール作りと監視を行う役割をになうのが、資材調達部です。
2、資材調達部に価格や手配先を決定する役割があるから
資材調達部は、買うものは決められません。
ですが「購入先」「価格」「購入リードタイム」を決定する事ができます。
購入金額は在庫の金額に直結します。
購入リードタイムは、適切な在庫量を決定しますね。
例えば、実際の仕事では、リードタイムや価格に応じて以下のことを決めているはずです。
・回転在庫│比較的安全で、数日分あれば十分な在庫
・安全在庫│不良や遅延によるラインの欠品を防ぐための在庫
・政策在庫│リスクや不安材料などから政策的もつ在庫
そして、結果として余ってしまった在庫が以下の2つであり、管理対象となります。
・過剰在庫│思惑よりも多く在庫になった回転在庫
・不動在庫│在庫を持っているうちに動かなくなりデッドストック化したもの
3、在庫管理の本質はルールつくりだから
在庫管理というのは、本質的には「運用のルール作り」のことです。
例えば、資材調達では次のようなルールを決める権限があります。
・在庫の呼び名の定義を決める
・受け入れ、保管、廃棄の基準を決める
・棚卸し資産の評価方法を決める
・棚卸資産管理の権限を決める
これらは、すべて在庫を管理するための運用ルールです。
上記から「ルールを決められる部署=在庫の管理部署=資材調達部」といえます。
在庫を管理しなければならない理由【在庫の削減】
そもそもなぜ、在庫を管理しなければならないのか?
その理由は、会社が効率的な経営をするためです。
この答えを持っておくことは、仕事を進める上でとても大切です。
監視する役割を持つ資材調達担当に考えの軸がないと、他部署を指導できませんよね。
「在庫はゼロが理想」です。
「管理の理想は管理しないこと」だともいわれています。
ですが、現実的にそうはできませんから、在庫は管理する必要があります。
すべての在庫は「悪」である
在庫は「罪固」とも言われる事があります。
罪が固まる、つまり「ロスのかたまり」という意味です。
本質的には在庫はゼロが理想です。
なので、在庫がある限り、会社方針から「在庫削減」の目標が消えることはありません。
資材調達部員であるうちは、ずっと付き合っていく事になると覚悟しましょう。
在庫は資産ではない
「でも、在庫は資産じゃないの?」
よくこんな間違いを聞きます。
これは、作れば物が売れた時代の思考で、間違いです。
在庫には以下のリスクがあり、資産ではありません。
・在庫はキャッシュフローを悪化させる
・在庫を置いておくだけでもお金がかかる
・在庫は保管中に劣化する可能性がある
在庫はキャッシュフローを悪化させる
製造業では、仕入れしたものに付加価値を加え、売り上げて初めて現金が回収できます。
仕入れに払ったお金が、いつまでも現金化できなければキャッシュが不足します。
そうすると次の購入や設備投資、社員の給料に回すお金がなくなってしまいますよね。
なので、お金の流れ(キャッシュフロー)の停滞を招く在庫は資産ではなく罪固です。
在庫を置いておくだけでもお金がかかる
「いつか売れるから同じだろう」という人がいますが、間違いです。
在庫を置いておくだけで、スペースのお金がかかっています。
一般に資材調達のコスト計算では、1,000円/㎡で金額表現します。
また、在庫を移動させたり、棚卸しするのにも人件費がかかっていますよね。
ですから「いつか売れるからいいだろう」という考え方も排除しましょう。
在庫は保管中に劣化する可能性がある
在庫している間に、劣化して出荷できなくなれば、それは不良品です。
劣化の理由は、様々考えられます。
錆びたり、変色したり、その他、注文がストップしても使えません。
無駄なお金をかけて在庫にし、無駄なスペースと人件費を使い、その結果が、1円にもならない不良品を作っているとすれば、会社の利益はすぐになくなってしまいます。
在庫を管理して削減する方法
具体的に「在庫を管理して削減する方法」を3つ紹介します。
これは多くの企業で、主に実践されている方法です。
1、IT化
2、小LOT化
3、見える化(5S)
順番に解説します。
在庫削減方法1、IT化
かつては台帳管理が主力でしたがIT化によって端末管理に移行しています。
最近ではIoTの発達により、ICタグによる管理が進んでいますよね。
IOTは、Internet of Things(モノのインターネット)のこと。
モノ自体がネットとつながることで、情報が把握しやすくなります。
ICタグで管理できるようになると、さらに在庫管理は楽になります。
位置情報が人目で把握できるうえに、棚卸し作業のロスもゼロ化できます。
少し未来予想をします。
ここでプログラミングのスキルを持っていると、楽ができそうですよね。
IOTのシステムを自分が使いやすいように、カスタムを依頼しやすくなるからです。
わたしも社内システムは自分の使いやすいようにカスタムしてます。
人が作ったものを使うのと、自分の使いやすいものを使うのでは、生産性に大きな違いがあります。
将来、残業ゼロで働くには、プログラミングの知識があると有利ですよ。
在庫削減方法2、小LOT化
1回の購入量を小さくできれば、在庫を減らす事ができます。
一般に在庫を管理する指標をして、以下の2つのどちらかを使います。
①在庫回転率=売り上げ金額÷在庫金額
②在庫回転期間=在庫金額÷売り上げ金額
①在庫回転率は在庫がすぐ使われるのかどうかの在庫の量を見る指標です。
②在庫回転期間は、何日分保管しているのかの効率性を見る指標です。
どちらを使っても構いません。
資材購買の仕事は、以下のことを地道にやるだけですからね。
購買の在庫削減の実務の現実は「泥臭い交渉」ですよ。
より小lot対応してくれる優良取引先を探す
既存の取引先と交渉する
設計部門などと協力して、小lot購入できる仕様に変える
工場と協力して、段取り回数を増やす
営業と協力して、顧客にlot引取りの交渉をする(MOQ交渉)
在庫削減方法3、見える化(5S)
「見える化」とは、在庫を整理し異常な状態を一目で分かるようにする事です。
つまり、ロケーション管理です。
ロケーション管理の手法として「5S」手法が良く使われます。
基本ですから覚えておくといいですよ。
「5Sとは?」
5Sは製造業の人なら誰でも知っている言葉です。
整理 │いるモノといらないモノを分けて、いらないものを捨てる
整頓 │決められた場所に置き、すぐに取り出せるようにしておく
清掃 │掃除を行いキレイに保ち、異常がすぐに分かるようにしておく
清潔 │整理、整頓、清掃を維持すること
しつけ│ルールや手順を守る習慣をつけること
最近「断舎利」とか「ミニマリスト」が流行して、言葉は知っているかもしれませんね。
本質は、作業の部分よりも、太字にした行動のほうです。
わたしの部下でも、前半部分だけを覚えて、本質部分は覚えていない人がいます。
気をつけましょう。
まとめ
在庫管理がなんで資材調達の管理項目なのか?
在庫を管理して、削減する事が何故必要なのか?
こんな疑問の理由は結論は以下のとおり。
理由① 資材調達部門は好き勝手に注文したがる要求側を監視する役割がある
理由② 在庫管理は本質的にはルールつくりのこと
理由③ 資材調達部門は、そのルールをつくる事ができる
在庫管理は資材調達部門の管理項目であり、在庫を適正化することで効率的な経営に貢献しているんですね。
本記事を読むことで、悩みや疑問を持つことなく自分の役割に邁進されることを願っています。