資材購買調達の仕事の中でも特に重要で花形ともいえるのが「価格交渉」でしょう。
資材購買調達部員が実行したコストダウンは、そのまま会社の利益になるからです。
ですが、その前に「見積もり」があることを忘れてはいけません。
例えば先日、こんなツイートをしました。
コスト監査で、工場のコンプレッサー保守点検の検証
・一回につき150万円
・メンテなら30万円
・車検と違い法的義務は無い思考停止で今までいくら払ってきたの?
1千万は改善できそう
・自主点検とメンテで延命
・減価償却後に買い替え
・最新の方が電気代も節減
・ドレン水の監視だけは注意— カモカモさん@未来をえらブログ (@kamokamoman) November 6, 2019
かつては資材購買というと、購買品を決められた納期どおりに納品すればいいと思われていました。
ですが最近は価値を生み出さない購買部員は「ロー・バリュー・バイヤー」なんて呼ばれてしまいます。
ローバリューなバイヤーのままでは、将来のリストラ対象です。
そうはなりたくありませんよね?
今回は、資材購買部員歴25年以上で部長職を務めている筆者が、誰でも簡単に始められる見積もりの基本をお伝えします。
ほんの数分この記事を読んでいただけるだけで、いままでよりもグッと楽に、それでいて大きな成果を出せるようになるはずです。
【保存版】資材調達購買のプロが教える見積り書の見方と実践テクニック
価格交渉をうまく進めるためには、原価計算や市場調査などが大事という人もいます。
ですが、それは、テクニック的な部分にすぎません。
わたしは、経験からもっと基本的な「見積り」の部分が大切であると確信しています。
そしてバイヤーがハイバリューなのか、それとも価値がないのか?を決めるポイントとは
いかに「気合の入った見積もり」を出していただけるか?
これに尽きます。
バイヤーの技量は気合の入った見積りをとれるかどうか
見積もりにおけるチェックポイントは6つあります。
①メーカー標準品の場合│見積もり先の一覧を作る
②特殊品の場合│コストテーブルを作る
③メーカー指定は最悪│排除すべし
④見積もり合わせは意味がない│気合の入った見積もりを取れるかが重要
⑤常にコストデータを集める│コストチェックは泥臭くやる
⑥見積書は自社のフォーマットに統一│できるだけ細分化していく
もっとも大切なのは「気合の入った見積もりをとれるかどうか?」です。
このポイントが、資材購買部員の技量になります。
気合の入っていない見積もりをいくらとっても意味がないですよ。
複数見積りは、買い手が有利な時しか効果がありません。
状況に合わせた使い分けが必要です。
例えば、商品は工場を出荷する時点の価格は売値の3割~5割の価格といわれています。
ましてや、相手は約戦練磨の営業マン。
他社の動向を読んで、それっぽい見積もりを出すことなど朝飯前ですよ。
方法はいくつかありますが、代表的なテクニックを紹介しましょう。
気合の入った見積もりを手に入れるテクニック
気合の入った見積もりを手にいれるコツは5つあります。
①依頼先を工夫する
②談合されないようにする
③空見積もり・参考見積りはしない│安ければ、きちんと注文を出す
④競争の演出をする│ただしフェアーに
⑤注文のいかなかった会社にも配慮を行う│コメントは必ず出す
実にシンプルなことですが、これが王道です。
注意点としては、取引先あっての購買ですから、取引先を尊重すること。
競争を演出することも大切ですよ。
資材購買の基本は
- 当たり前のことを
- 妥協せず
- 実直・誠実に
- 徹底的に行う
ですからね。
さらに「現地」「現物」「現実」の3現で仕事ができれば最高のバイヤーです。
見積もりのスキルアップ法【5つある】
見積もりを手に入れたら見積もりを読み取る力も必要です。
- その価格が適正なのか?
- まだ交渉の余地はあるのか?
精査しなければ、高い買い物をすることになってしまいますよね。
資材購買が高いものを買わされる会社はつぶれてしまいます。
見積もりの水増しを見抜く目が資材購買部員の特殊スキルです。
水増しを見抜くには、見るべきポイントは以下の3点です。
①2重計上
②材料の水増し
③輸送費の水増し
見積もりを精査するスキルは、実戦で上げていく事ができます。
方法は5つあります。
1、現場を見る目を養う
2、見積もりを細分化する
3、新規見積もりの結果から改善する
4、コストダウンしやすい分野を知る
5、注意点│下請法の知識を得る
【スキルアップ1】現場を見る目を養う
資材購買部員は特に「現場を見る目」を養うことが重要です。
現場を見る目を養うためには、以下の事に取り組んでみてください。
・良い評判の会社を見せてもらう バスツアーなどあり参加できる。
・現品を確認して、ポストイットなどで値札をつけてみる。
少し注意点を付け加えましょう。
ツアーは同業を見ても得るものは少ないので、他業種を見ましょう。
ポストイットをつけていくと、同じようなものなのに価格差があることに驚くはず。
同じ様に見えるものの価格の差をつめていくことで、見る目が養われます。
「見る目」が養われてくると、現物と見積もりを見ただけで、コストダウンできるポイントがスッと分かるようになりますよ。
【スキルアップ2】見積もり細分化していく!
取引先には、見積もりの明細をだしてもらうようにしましょう。
見積もりの明細は初めは出ないのが普通です。
以下のことを粘り強くお願いしていくと、やがて出してもらえるようになりますよ。
- 出してもらうようにしつこく何回も言う
- まず材料費を分解してもらう
- 材料費から、ほかの項目へ(時間をかけて細分化していく)
自社の指定フォーマットを準備できるようになると、レベルアップのスピードも上がりますよ。
【スキルアップ3】新規開拓はレベルアップのチャンス
新規に見積もり先を拡大したときは、さらに一段レベルアップするチャンスです。
新規取引先を開拓して見積もりした場合、現行の価格と比較しますよね。
その場合、ただ「安かった」「高かった」で終わらせるのはもったいないです。
さらに深堀りです。
以下のAまたはBに当てはまらないか?チェックしましょう!
A、2社以上が現行より安い
B、2社以上が現行より高い
A:2社以上が現行より安い場合
今の取引先が怠慢に陥っている可能性があります。
現行の取引先の指導を行うか、思い切って新規の取引先を優遇すると良いでしょう。
Bの場合:2社以上が現行より高い
こちらの見積もりの方法が悪いことを疑いましょう。
例えば、図面や仕様の提示方法がマズイと考えられます。
自身の見積もり依頼のフォーマット、仕様の伝え方を見直してみる機会にしましょう。
【スキルアップ4】コストダウンしやすい分野を知る
特に名前に「ソウ」とつくものには無駄が多い傾向がありますよ!
たとえば、包装(ホウソウ)とか運送(ウンソウ)とかです。
梱包資材などの「ホウソウ」の分野は、自社の仕様書や設計は非常に無駄が多いです。
これは、自社の設計が現場の使いやすさや顧客の意見を聞きすぎるからです。
プロである取引先に設計を任せたほうが、はるかに安くできる可能性が高いです。
自社の設計部門は嫌がるかもしれませんが、自社仕様は高いと思うべし!です。
本当にコストを下げたいのならば、設計部門を誘導して、ニーズを伝える努力をしたほうが会社に貢献できます。
一方「ウンソウ」も無駄の多い分野です。
コストダウンの基本は、見積もりの細分化です。
細分化は、原価の3元素である「材料費」「労務費」「経費」に分けるのが基本です。
例えば運送費ならこうなりますよね。
- 「材料費」=トラックの購入価格と原価償却
- 「労務費」=運転手の拘束時間と人件費
- 「経費 」=ガソリン代や高速料金
要素に分解して、地道にひとつずつ計算していくことです。
そうして算出した全体のコストがその「ウンソウ」にかかる原価です。
単価を荷物の面積なり、重量などで価格を決定している会社がありますよね。
実際にかかるコストは荷物の数とは関係がありません。
【スキルアップ5】見積もりの注意点│下請法の知識
購買担当の日常の行動が相手を刺激していないかどうか?は気を付けておきましょう。
親会社の購買は、下請け企業に対して不利益になる行動をしがちな立場にあります。
下請け企業を守るために、「下請法」という法律があるぐらいです
「下請法」については、バイヤーなら基本的なことは知っておくべきでしょう。
今回は、購買が気をつけるべき法律=「下請法」の解釈として、最近変化したことを買いておきます。
- 今後120日を超える手形
- 一律5%などの値引き交渉
これは、今後、違法行為となるかもしれません。
下請法は、そのときの社会情勢で解釈が代わる法律でもあります。
下請法については「下請け取引シンポジウム」が各都市で開催されていますから、機会があれば参加しておくことをお勧めします。
まとめ
デフレで不景気な世の中では、利益を乗せて物が売れる時代ではありません。
ならば企業がどこで差をつけているのか。
それは、販売で得る「売りの利益」と対極の、購買で得る「買いの利益」です。
現代の資材購買部員は、ただ買っているだけではダメ。
これからの資材調達購買は「調達するという機能」を通じて利益を作り出す部署でなければなりません。
バイヤーは、自らの交渉力や新規取引先の開拓力を発揮して、会社に価値をもたらすことが求められています。
つまり、ハイバリューなバイヤーは「会社に無くてはならない人材」になれます。
また、常に会社に利益をもたらす購買部員は、どこの企業でも重宝されるはずです。
あなたが資材購買部員であるということは、すごくラッキーなことです。
「見積もり」という、たった一つのスキルを伸ばしていくだけで、リストラされる心配はぐっと減ります。
資材購買の仕事は、とても恵まれた仕事ですよ。
・スキルを積み上げる事がでる
・会社に必要な人材となれる
・会社を辞めたあとでも、コンサルや指導員として稼ぐ事ができる
少しずつでもスキルを積み上げて、お互いに一流を目指しましょう!
今回は以上です。